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 2010年7月29日(木) 20:05 JST

過去生療法(かこせいりょうほう;past-life therapy)

  • 2008年4月 2日(水) 18:45 JST
  • 投稿者:
    Admin

 催眠を使って幼少の頃を思い出させることを「逆行催眠」(退行催眠)というが、幼少の頃よりもさらに「時間を遡ら」せて、「生まれる前の記憶」を引き出すことで行われる「療法」のこと。



このことをもって「前世」が存在すると主張する者もいるが、この主張はいくつかの点で問題があると思われる。
まず第一に、(生まれる前までいかなくとも、幼少時代の「記憶」であっても)逆行催眠時に話された内容は、しばしば歴史的事実に反する。これは、催眠術下の人間が外からの暗示に対して極めて弱く、暗示に応じた答えや「偽の記憶」を作り出すことから生じる。さらに過去の別の記憶も組み込まれ、一部の真実を含む虚構の記憶が作られることが多いことが記憶研究から分かっている。
つまり逆行催眠で「生後の記憶」を呼び覚ますことすら、正確には行い得ないのに、「生前の記憶」が呼び覚まされたとして、それが「前世」の存在と直接結びつくといえるかどうかは、かなり疑問である。これについては、「生前の記憶」と歴史的事実の綿密な照らし合わせを行うことで著名な、前世研究の第一人者であるスティーヴンソンですら、past-life therapyがいう「前世」には否定的である※1。

※1 Stevenson, I. (1994). A case of the psychotherapist's fallacy: Hypnotic regression to "previous lives." American Journal of Clinical Hypnosis, 36, 188-93.

 第二に、過去生past-lifeと前世が、じつはまったくの別物である点である。
前世を英訳には、普通former incarnationが使われるが、これが誤解の元である。これは転生(てんせい:reincarnation)と(輪廻)転生(てんしょう)が異なる、ということでもある。incarnation は「肉体を与える[られる]こと, 人間の姿[形]をとること」をいう。したがって転生(てんせい:reincarnation)もまた、通常は人間(か、それ以上の存在)に生まれ変わることだけを指す言葉である。しかし転生(てんしょう)の方は、かつて湯川秀樹が「君は輪廻を信じへんのか?そりゃ楽観論やで。ぼくは、死んだら豚に生まれ変わる思たら、死んでも死に切れん」※2と思い悩んだように、人間以外に生まれ変わり得ることを当然に含んでいる。しかも輪廻転生は、そのサイクルは無限に続き、生きとし生けるものはすべて、無限に転生(てんしょう)に投げ込まれることを言うのである。それは人生に意味を与えるどころか、むしろ徹底的に意味・意義を奪い、まともに取り組むならあらゆる人を虚無主義(ニヒリスム)の渦に叩き込むものである。

※2 数学者の森毅の証言による。なお湯川はこの言葉の後、「そやけどな、最近はようやく、豚なるんやったらなるでそれもええ、と思えるようになってきた。こういうのをサトリいうんやろか」とも付け加えている。さすがはヒデキである。

 さて、簡単な思い違いか、何らかの戦略によるものか、判然としないが、past-life therapyで一世を風靡したBrian L.Weiss MD の"Many Lives, Many Masters"は、どういう訳か『前世療法―米国精神科医が体験した輪廻転生の神秘』というタイトル(とサブタイトル)で訳されている。これは確かに、俗に言う(都合の良い)「前世」理解や「輪廻転生」理解(誤解)に寄り添う形となっている。
どうして語られた前世の記憶は、そろいもそろって、現にその記憶を語るものよりも、高貴でドラマティックなのだろうか? なぜミジンコやブタだった前世の記憶を誰も語らないのか? 
 


 

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